2014/07/04

クラーク精神とロータリー

昭和11年10月7日の札幌RCの例会では、札幌訪問中の平生文部大臣が
次のように挨拶をしています。

引き続き、『三十年の歩み』(札幌ロータリークラブ)から引用します。

「・・・私はこのたび北海道大学に参り、色々創立当初よりの事情を見聞した
 のでありますが、実に感激に堪えないものが多かった。
 殊にウイリアム・スミス・クラークがわずか8ヵ月の間にその基礎を作ったと
 いうことは驚くべきことであるが、そのクラークは英国から移住した
 ピューリタンの血を受けた立派な人格者で『人を造る』という点に非常な
 力点を置いたことは吾らの学ばねばならんことであります。

 大学の50年沿革史で拝見したことであるが、時の黒田清隆氏は、
 『文化の進歩を図ることは、人を造ることである。その成果によって
 国が栄えもすれば衰えもするものである』といわれているが、
 宣なるかなと思う次第であります。
 新聞を編集する1人の学生が私の許に来り、『北大は自然科学だけであって
 人文科学がないから精神文化について欠けるところがあるのではないか』と
 尋ねました。
 そこで私は答えてそれはあれば好いが、而して人文科学がないために精神と
 いうことは当たらない。クラーク先生の如きは科学者であったが、
 当時如何に多くの人物を生んだことであるか。

 私はロータリーの精神が正しく徹底して会員がそれぞれ身を以て
 社会に奉仕すれば決して国が衰えるような心配はないと考えます。
 希くばService above Selfの精神を以て尽瘁(注:じんすい=自分の苦労を
 顧みることなく力を尽くすこと)して頂きたい。
 今や日本は思想的にも非常時であるが、ロータリアンがこれが打開に当って
 一層の責任のあることを自覚しなければならぬと思います。

 本日は突然出まして所感を述べさせて頂きうれしく思います。」

平生 釟三郎(ひらお はちさぶろう)1866年〜1945年
日本の実業家、教育者(甲南学園創立者)、政治家(文部大臣、貴族院議員)
1935年、ブラジルのコメンダトール勲章を受章。灘購買組合(日本初の生協)の
設立や、大阪ロータリークラブの設立にも尽力した。