2014/01/14

「アジア太平洋共同体の可能性」入江昭先生のご講演

2013年度 国際交流基金賞を受賞されました、
入江昭先生(ハーバード大学名誉教授)の記念講演会が、
2013年10月28日、国際文化会館(東京・六本木)で開催され、
聴講させていただきました。

演題「アジア太平洋共同体の可能性」

このたび、NHKラジオ第2で、その講演が公開されました。
(再放送は、2014年1月18日午前6時〜)

講演の中で、入江先生は、「国家中心ではなく、人と人とのつながりを
重視すること」の重要さを強調されていました。
また、「国家単位の歴史ではみえないものがある」として、近年、
新しい歴史の見方があること、また、ご自身も『新世界史』(全6巻)の
刊行に関わっていらっしゃることも明らかにされました。

入江先生は、戦前にも、欧米中心ではない対話関係の構築が、アジア太平洋地域で
開戦直前までおこなわれていたことにも触れました。
これは、新渡戸稲造博士が日本代表を務めていた、太平洋問題調査会の活動を
指しています。

「徹底的にハイブリッド化(雑種化)することはいことだと思う」と
おっしゃっていたのが印象的でした。
(ハイブリッド=hybrid、元々の意味は、2つ以上の異質のものが組み合わさって
 一つを成すこと)
つまり、雑種文化としてみると、アジア太平洋地域は進んでいて、いち早く、
めぐりあいによって雑種化し、知的なつながりがありました。

「歴史の事実は一つ」なのだから、たとえば、中国と日本が同じ教科書を
使うことで、一般の人たちが、歴史を共有するという機運が高まれば、と
結んでいらっしゃいました。

入江先生の受賞および記念講演会については、こちら(国際交流基金のサイト)。

入江昭先生について、ご著書『歴史を学ぶということ』(講談社現代新書 2005年)から
ご紹介します。
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入江昭先生は、1934年、東京の護国寺近くでお生まれになり、10歳で終戦。
成蹊高校をご卒業後、グルー基金によって、
アメリカの私立大学の名門ハヴァフォード大学に留学されました。
優秀な成績でご卒業、ハーヴァード大学の大学院に奨学生として入学。
以後、歴史学者としての道を歩みます。
1960年、前田光子様とご結婚。
(お父様は、新渡戸博士の教え子 前田多門氏のご長男、前田陽一氏。
 祖父 前田多門、父 前田陽一、叔母 神谷美恵子、各氏については、こちら。)

入江先生は、その後、シカゴ大学(約20年間)などで教鞭をとられました。
ご専門は、米国外交史、国際外交史。
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この本には、歴史学者としての国際的なご経験やお考えが書かれており、
大変勉強になりました。
ちなみに、新渡戸稲造博士の養子の孝夫氏も同大学に留学しています。
ハヴァフォード大学については、こちら。(2013年夏に訪問)

夫人の入江光子様は、永井荷風の作品を英訳されています。

入江様ご夫妻とご親交のある高木規矩郎氏が、今回の受賞についてなど、
ご自身のブログに書いていらっしゃいます。
(高木様と私は、鎌倉ペンクラブでご一緒させていただいています)

ブログ「鎌倉の世界登録遺産を考える」の「入江昭先生のこと」は、こちら